科学史 (5) 近世ニュートンの科学

ヨーロッパで科学の学会が設立され、科学技術の伝達機会を増した。
物理学ではガリレオやケプラーが観測した運動を数式化することが進められた。
光や波に関する研究もこの頃始まり、光は波なのか粒子なのかという論争が巻き起こる。
17世紀後半ではニュートンの提案した力学の概念が科学界を席巻した。
数学ではライプニッツと共に微分積分学の基礎を切り開いた。
また初の蒸気機関がイギリスで産まれ、産業革命へと発展していった。

ロバート・ボイル ボイルの法則 1662

一定温度の下で理想気体の圧力は体積に反比例する。
$$ p_1v_1 = p_2v_2 $$

アントニ・ファン・レーウェンフック 微生物を発見 1674

顕微鏡を使って微生物を発見した。

ジョヴァンニ・カッシーニ  土星の輪の観測 1675

土星の輪が複数から成ることを発見。(カッシーニの間隙) 1675

オーレ・レーマー 光速度の測定 1676

当時は遠く離れた場所で同じ時刻を測るために天体現象(特に木星の衛星の食)がよく用いられた。
ところが現実の食時刻と木星の衛星の食の時刻の予測値とのズレが周期的なことから、
レーマーはこの周期が木星と地球の距離が変化して光が伝わる時間が変化することに拠るものだとして
光速度が有限(240000km/h)と推測。

ロバート・フック フックの法則 1676

ばねの伸びは加えた力に比例する。

\( \displaystyle F=kx \)

ホイヘンス ホイヘンスの原理で波の回折を説明 1678

波面上の全ての点がそれらを波源とする球面波(素元波)を発生させ、
素元波の共通に接する面が次の瞬間の波面を作る。

波の性質である反射、屈折、回折をうまく説明できた。

エドモンド・ハリー ハレー彗星の回帰の予言 1682

1758年に回帰を予言も回帰を見ることなく亡くなる。
1758年末に実際に回帰が観測される。
この功績からこの彗星がハレー彗星と名付けられる。

微分積分学

微分積分学の基本定理

曲線の接戦を求める問題と面積を求める求積法は古代より研究されていたが、
それらが互いに逆演算であることを示した。
アイザック・ニュートンゴットフリート・ライプニッツが独立に発見したとされる。
現代的な記法\((\frac{d}{dt}, \int)\)はライプニッツのもの。

アイザック・ニュートン プリンキピア 1687

自身の構築した微分積分学を使った議論ではなく、幾何学の手法で証明した。
古来よりある格式高い幾何学の方が当時の科学者に受け容れられやすいとの考えがあってのもの。

ニュートン力学

  • 力が作用していない物体は静止し続けるか,等速直線運動を続ける。 (慣性の法則)
  • \( F=ma=m\frac{dv}{dt}=m\frac{d^2x}{dt^2} \) (運動の法則)
  • 物体Aが物体Bに力Fを及ぼすとき、物体AはFと逆向きで大きさの等しい力を受ける。 (作用反作用の法則)

万有引力の法則

物体の間には距離の二乗に反比例し、それぞれの質量に比例する力が働く。
比例定数\(G\)は万有引力定数。

$$ F=\frac{GMm}{r^2} $$
距離の二乗に反比例する力が働くことからケプラーの法則を導出できる。
地上での運動と天空の運動を同時に説明できる式を得たことになる。

光学 1704

  • 光は波か粒子か論争で、エーテルを伝わる粒子説を唱えた。
  • プリズムで太陽の光を分光。色によって屈折率が異なることを見出す。
  • ニュートン式反射望遠鏡:屈折望遠鏡では色収差で性能に限界があると感じ、色収差が起こらない反射望遠鏡を制作した。

ロルの定理 1690

\(有界閉区間[a, b]上で定義された連続関数f(x)が微分可能でf(a)=f(b)を満たすとき,\)
\(f'(c)=0, (a \leq c \leq b) となるcが存在する.\)

ロピタルの定理 1694

\( 開区間(a < c < b)において, 関数f, gが微分可能で,\ g'(x) \neq 0 \ (x \in (a, b) )とする. \)
\( \displaystyle \lim_{x \to c}\frac{f'(c)}{g'(c)}が存在し,  かつ\lim_{x \to c}f(c)=\lim_{x \to c}g(c)=0 または\pm\inftyのとき, \)
\( \displaystyle \lim_{x \to c}\frac{f(c)}{g(c)}=\lim_{x \to c}\frac{f'(c)}{g'(c)} \)

ドニ・パパン、トーマス・セイヴァリ 蒸気を力に変える 1698

蒸気の力でピストンを動かす機械を発明。

フランシス・ホークスビー 1700頃

  • 音が伝わるのには空気が必要であることを証明。 (真空の研究)
  • 摩擦したガラス管は真鍮箔を引きつけるが、接触後は引き付けなくなる。(静電気)

ヤコブ・ベルヌーイ 1654-1705

ベルヌーイの不等式

\( 任意の整数r \geq 0, 全ての実数x \geq -1で次が成り立つ.\)
\( (1+x)^r \geq 1+rx \)

ベルヌーイ数: 関孝和も独立に発見。

\( 1^p + 2^p + 3^p + \cdots + n^p の総和公式の研究から \)

\( \displaystyle B_0=1, \ \sum_{k=0}^n (-1)^k {}_{n+1}C_k B_k=0 \)
\( \displaystyle \sum_{k=1}^nk^p=\frac{1}{p+1}\sum_{k=0}^p {}_{p+1}C_k B_k n^{p+1-k} \)

ベルヌーイ試行

ベルヌーイ試行はコインの表裏のように2つしか取りうる値のない試行のことである。
\(確率pのベルヌーイ試行をn回行いx回成功する確率Pは\)
$$ P={}_n C_x * p^x * (1-p)^(n-x) $$

ベルヌーイの微分方程式

$$ \frac{dy}{dx} + P(x)y = Q(x)y^n $$

アブラーム・ド・モアブル ド・モアブルの定理

$$ (\cos{t} + i \sin{t})^n = \cos{nt} + i\sin{nt} $$

ブルック・テイラー テイラー展開 1715

$$ f(x)=f(x_0)+f'(x_0)(x-x_0)+\frac{1}{2!}f^{\prime\prime}(x_0)(x-x_0)^2+\frac{1}{3!}f^{\prime\prime\prime}(x_0)(x-x_0)^3+\cdots $$

ヤコポ・リッカチ リッカチの微分方程式 1720

$$ \frac{dy}{dx} + P(x)y = Q(x)y^2 + R(x) $$
特解が1つでも見つかれば、変数変換によってベルヌーイの微分方程式に帰着できて解ける。

ジェームズ・ブラッドリー 光行差の測定 1728

光速度を約301000km/sと計算した。