科学史 (2) 古代 ギリシャの科学

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万物を組織だって考えようとする科学の思想が生まれた。
万物は何から成っているか、その根源を説明するために、
自然を観測して一般的原則を導き出そうとした。
共同で学問を研究するための機関が生まれた。

セメント、ローマンコンクリート

古代ローマでは火山灰が混ざったセメントが強度を増し、水中でも硬化することに気づいた。
現代のコンクリートは大気中で酸化されることで百年程度で強度が落ちるが、
ローマンコンクリートは数千年の時を経た現在でも建造物が残る。

タレス

最初の哲学者、始まりの数学者と呼ばれる。
万物の根源は水であると説いた。

  • 日蝕の日を予言。
  • 三角比からピラミッドの高さを測定。
  • 図形に関する定理を導出。
    • タレスの定理:直径の円周角は90°である。

ピタゴラス

ピタゴラス学派 BC530

万物の根源は数である。秘密組織ピタゴラス教団を結成して数学を研究する。
秘密主義であったため研究は秘匿されたが、
教団の入団試験に不合格となった志願者からの恨みを買って焼き討ちにより殺害されたとされる。
その研究成果はピタゴラスの死後弟子たちによってヨーロッパ各地に広まった。

既に知られていたピタゴラスの定理を証明

ピタゴラスの定理

$$ c^2 = (a + b)^2 – 4 \cdot \frac{ab}{2} = a^2 + b^2 $$

1辺が1の正方形の対角線の長さが整数の比で表せないことを発見

\( x^2 = 2, x = \frac{p}{q} (既約分数)とおく. \)
\( 2q^2=p^2 となるのでp=2p’とおける \)
\( q^2=2{p’}^2 となるのでq=2q’ とおける \)
\(\frac{p}{q} \)が既約分数に矛盾する.
したがってxは整数の比で表すことができない.

弟子が存在を証明も分数で世界のすべてを表せると考えていたピタゴラスは処刑してしまった。

プラトン

「幾何学知らざるもの入るべからず」アカデメイアに学園を設立して数学を教鞭。
この頃からニュートンの時代までは幾何学こそが数学の中心であり神聖なものであるという考えが強い。

「プラトンの立体」と呼ばれる5つの正多面体をまとめた。

ギリシャ数学の三大作図問題

真っ直ぐに線を引くだけの定規と円を描くだけのコンパスを使ってどこまで作図できるか。
古代ギリシャの数学者を悩ませた難問。
1800年代に入ってようやくいずれも不可能という形で証明された。

  1. 与えられた円と等しい面積をもつ正方形を作ること(円積問題)
  2. 与えられた立方体の体積の 2 倍に等しい体積をもつ立方体を作ること (立方体倍積問題)
  3. 与えられた角を三等分すること(角の三等分問題)

ゼノンのパラドックス アキレスと亀

\( アキレスの位置をA_0, 亀の位置はA_1として亀はアキレスより少し先にいるとする. \)
\( アキレスがA_1の位置に来た時, 亀は少し先のA_2に到達している. \)
\( アキレスがA_2の位置に来た時, 亀は少し先のA_3に到達している. \)
\( アキレスはいつまでたっても亀に追いつくことができない. \)

無限を考える初歩としてよく例に出される。

ヒポクラテスの定理

直角三角形の3つの円に成り立つ定理。

エウクレイデス(ユークリッド)

原論

幾何学や数論の知識を体系的にまとめた。
公理・公準と呼ばれる大元の命題が成り立つならば、
次の命題が証明できるという論旨で展開される。
この考え方は現代数学に通ずるものであり、
以後2000年余りに渡って数学の原典として参照された。

ユークリッド幾何学

点、直線、円などの定義から始まり、それらが正しいことを認めるならば以下の定理が成り立つ。
という論調で幾何学の証明を行った。

第五公準:2直線に他の1直線が交わってできる同じ側の内角の和が2直角より小さいなら、
この2直線を延長すると、2直角より小さい側で交わる。

平行線公理と呼ばれる第五公準のみは自明でなく、
数学者たちは論争を繰り広げるものの、18世紀になるまで解決しなかった。

完全数

約数のうち自身を除くものの和が自身と一致する。

$$ M_p =2^p-1 が素数のとき, 2^{p-1}(2^p-1)は完全数.$$

偶数の完全数はこの形に限ることをオイラーが証明。
奇数の完全数に関しては存在するかどうかも未解決。

素数は無限個存在する

素数を有限個として \(p_1, p_2, \cdots, p_n\) とする.  \(\cdots\) ①
\(P = p_1p_2 \cdots p_n + 1 \)は\(p_1, p_2, \cdots, p_n\) のいずれとも互いに素である.
\(P\)は自身が素数であるか, \(p1, p2, \cdots, p_n\) 以外の素因数を持ち①に矛盾する.
したがって素数は無限個存在する.

ユークリッドの互除法

最大公約数を求めるアルゴリズム。
世界初のアルゴリズムとも言われる。

aとbの最大公約数を求める.
aをbで割った余りをrとする.
\(r \neq 0\)のとき, aにbを代入, bにrを代入して余りを求める操作を繰り返す.
\(r=0\)のとき, bが最大公約数である.

アポロニウス

アポロニウスの円

2点からm:nの比にある点の軌跡は円である。

アルキメデス

アルキメデスの原理

流体中の物体は、その物体が押しのけている液体の質量と等しい浮力を受ける。

$$ F= \rho Vg $$

エウレカ!

動滑車

滑車は力の向きを変えたり、小さな力で大きな物体を動かすことができる。

てこの原理

「私に支点をくれたら地球を動かしてみせよう。」

支点・力点・作用点。てこも小さな力で大きな物体を動かすための道具である。

アルキメデスの螺旋

$$ r=\theta $$

螺旋の幅が等しい蚊取り線香。

円錐:球:円柱の体積比は1:2:3

エラトステネス

エラトステネスの篩 BC230

素数のリストを得る高速なアルゴリズム。

  1. 自然数を並べて、1を消す。
  2. 2は消えてないので2は素数。2の倍数を消していく。
  3. 3は消えてないので3は素数。3の倍数を消していく。
  4. 以降消えてないものが見つかれば、それは素数で、その倍数を消していく操作を繰り返す。
  5. \(p\)の倍数まで消せば、\(p^2\)までで消えてないものは素数である。

地球の大きさの測定

夏至の日に南中高度が90°になる地点と、そこから真北で南中高度が(90-x)°になる地点との距離が
地球の大円のx°分に相当することから地球の一周が求められる。

ヒッパルコス、トレミー

  • 天文観測のため、弧長を測って表にした。今でいう正弦の表。
  • 月までの距離の測定。
  • 歳差の発見。
  • 46星座の確定。

トレミーの定理

円に内接する四角形ABCDについて以下の等式が成り立つ。
\( {\rm AB \cdot CD + BC \cdot DA = AC \cdot BD } \)

アレクサンドリアのヘロン ヘロンの公式

\( 3辺の長さが a, b, c である三角形の面積 S は s=\frac{a+b+c}{2}として, \)
\( \sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)} \)

中国で黒点の記録 BC28

メネラウス

メネラウスの定理

三角形と直線について成り立つ定理。

$$ {\rm \frac{AD}{DB} \cdot \frac{BE}{EC} \cdot \frac{CF}{FA} = 1 } $$
頂点→分点を分子に、分点→頂点を分母にというのをAB、BC、CAの3つかける。

球面三角法

地球は球体であることを前提にして、航海や天体観測を行っていたので、
球面上で成り立つ幾何学の知識が必須であった。

この時代の数学は実需あってのものなので、
ただの数学ができるおじさんでは転生しても無双できないだろう。

ディオファントス

ディオファントスの人生は、6分の1が少年期、12分の1が青年期であり、
その後に人生の7分の1が経って結婚し、結婚して5年で子供に恵まれた。
ところがその子はディオファントスの一生の半分しか生きずに世を去った。
自分の子を失って4年後にディオファントスも亡くなった。

ディオファントス方程式

整係数多変数多項式の整数解を求める問題。
例: \( x^2 -13y^2 = 1 \)
一般的に難問である。

パップスの定理

\( 直線L_1上の点A, B, Cと直線L_2上の点D, E, Fを\)
\(それぞれ結んだときの交点が存在してP, Q, Rとなるとき, \)
\( P, Q, Rは一直線上にある. \)

中国人の剰余定理

連立合同式
\( x\equiv a_1 \ (\!\mod m_1) \)
\( x\equiv a_2 \ (\!\mod m_2) \)
\(  \cdots \)
\( x\equiv a_n \ (\!\mod m_n) \)
\( は, m_1, m_2, \cdots, m_nが互いに素ならば, 解がM=m_1m_2\cdots m_nを法に一意に定まる.  \)

アールヤバタ

  • \( ax + by = c の形のディオファントス方程式の整数解を示す \)
  • 惑星が楕円軌道を持つと述べた。