科学史 (1) 先史時代 ギリシャ科学以前の時代

ギリシャ科学が生まれる前は万物の仕組みについて体系づけられた思想というものはなかった。
専ら当時の社会を生き抜くための技術が継承されて発展していった。
洪水や灌漑が必要となった地域では、安定した組織社会を統治するための国家が生まれた。
そこでは生命線である農業を淀みなく行うための暦学、建築や農作物を管理するための数学が育った。

土器、石灰・漆喰:1万数千年前

粘土を焼くと焼成されて水や熱に強くなる。
この原理で作られた器は耐久性があって軽いので、
食物を給したり貯蔵したりするだけなく、
調理として用いることにも適している。
これが土器である。
石灰は貝殻が焼かれた跡にできる。
それと同様のものは石灰岩を焼いてもできる。

$$ \mathrm{CaCO}_3 \longrightarrow \mathrm{CaO} + \mathrm{CO}_2 $$

$$ \mathrm{CaO} + \mathrm{H_2O} \longrightarrow \mathrm{Ca(OH)}_2 $$

石灰に水と砂を混ぜると硬化性のある建材となる。
これが漆喰である。

シュメール人:楔形文字 BC30世紀

初期の文字は粘土板に硬いペン状の筆記具で引っ掻くことによって書かれた。
文書は焼くことによって長期保有することもできた。
言うまでもなく口伝ではなく書面での技術継承が行えるようになったことは大きい。

シュメール人:石鹸の発明 BC30世紀

油に灰汁を混ぜると汚れを落とす土ができた。
油に含まれる脂肪酸と植物灰に多く含まれる炭酸カリウムが反応して石鹸となる。

エジプトでギザのピラミッドが建設される: BC25世紀

1t以上の石灰岩の巨石が100万個単位で使われているが、
特筆すべきは建築精度で、ピラミッドはほぼ正確に東西南北を向いている。
エジプト人は星の運動から方位を知ったと考えられている。
またその建築は奴隷による強制労働ではなく、公共事業だったという説もある。

シュメール人:60進位取り: BC24世紀

1から60までの数字を表す記号を並べて大きな数を表す。
位の数がない”空位”を表す記号はあったが、0の概念はなかった。

ピタゴラス数が知られる(バビロニア数学): BC19世紀

\( a^2+b^2=c^2 \)となる数の発見。

バビロン第1王朝: ハンムラビ法典、√2の近似:BC18世紀

「目には目を、歯には歯を」で有名なハンムラビ法典が成立。
楔形文字には1 24 51 10と刻まれていた。

$$ 1 + \frac{24}{60} + \frac{51}{60^2} + \frac{10}{60^3}  \simeq 1.41421296 $$

バビロニアで月蝕が記録される:BC17世紀

月蝕とは太陽と月の間に地球が位置し、月面に太陽光が直接当たらないことによって暗くなる現象である。
天空の大きな天体が突然消えたように見えるため、古来より不吉なことが起こる前兆とされた。
それ故、月蝕の観測と予測がなされるようにによって天文学が発展した。

中国で青銅が使われる:BC17世紀

銅に錫を添加すると、適度な硬度と低い融点を得て加工しやすい金属となる。
鉄器文明になるまでは武器、農具、器、宝具などの主原料となった。

ヒッタイトで鉄器が使われる:BC14世紀

炭を使って鉄を鋳造する技術の開発。
BC12世紀頃にヒッタイトが滅んで周辺国に製鉄技術が広まったとされる。

エジプトとメソポタミアでガラスが製造される:BC14世紀

装飾具や宝具として使われた、

ウガリットで日蝕が記録される:BC13世紀

日食は月食と比べて発生確率が低い。
それゆえ人類はその存在や規則性に気付くのにも時間を要した。

最古のアーチ橋:BC9世紀

バビロニア人がサロス周期を発見:~BC7世紀

同じような日蝕、月蝕が18年と10日と8時間ごとに繰り返す。
これをサロス周期という。
3サロス周期(54年と1ヶ月)経つと同じ土地で日蝕、月蝕が見られることになる。